Batch Job のフェーズ

Batch Job コンポーネントが実行されるたびに、次のフェーズが行われます。

  1. Load and Dispatch フェーズ​: Batch Job コンポーネントにより​有効な入力​がレコードに分割され、レコードを処理する準備が整えられます。このフェーズは Batch Job コンポーネント内で行われます。

  2. Process フェーズ​: Batch Job の 1 つ以上の Batch Step コンポーネント内の Mule コンポーネントおよびコネクタの操作により、特定の Batch Job インスタンス内のレコードが処理されます。Batch Aggregator コンポーネント内での処理も Process フェーズで行われます。

  3. On Complete フェーズ​: Batch Job コンポーネントにより、Batch Job インスタンスの処理の結果が含まれるレポートオブジェクトが発行されます。

例については、​バッチフェーズの XML​ を参照してください。

Load and Dispatch フェーズ

フローのアップストリームイベントによって Batch Job コンポーネントがトリガーされると、Load and Dispatch フェーズが開始されます。このフェーズでは、以下が行われます。

  1. Mule によって、Batch Job の各フェーズで保持される新しい Batch Job インスタンスが作成されます。

    Batch Job コンポーネントのスコープ内で、​batchJobInstanceId​ 変数を使用して現在処理中の Batch Job インスタンス ID が Mule によって公開されます。​vars.batchJobInstanceId​ を使用して、任意のバッチ処理フェーズで現在のインスタンスの識別子にアクセスできます。自動生成される識別子は UUID ですが、別の値に変更できます。詳細は、Batch Job インスタンス IDを参照してください。

  2. Batch Job コンポーネントにより、受信されたメッセージペイロードが自動的にレコードに分割され、ステッピングキューにレコードが格納されます。

    Batch Job コンポーネントによって入力のすべての項目のレコードが正常に生成され、キューに追加されるか、​MULE:EXPRESSION​ メッセージなどのエラータイプと ​"Expecting Array or Object but got String." evaluating expression: "payload"​ などのエラーメッセージでイベント全体が失敗します。

    Anypoint Runtime Manager では、たとえば次のようにキュー名に ​BSQ​ というプレフィックスが付けられます。

    Batch Step キュートランザクションログ

  3. Batch Job コンポーネントにより、読み込まれたレコードを処理する Batch Job インスタンスの実行が開始されます。

Process フェーズ

Process フェーズは、Load and Dispatch でキューへのレコードの読み込みを完了し、Batch Job インスタンスの処理を開始した後に開始されます。このフェーズでは、Batch Step コンポーネントによって設定済みのサイズのレコードブロックがキューから抽出され、処理されます。(デフォルトのバッチブロックサイズは 100 です)。

Batch Step コンポーネント内での処理はブロックレベルで並列に行われますが、各ブロック内のレコードはデフォルトで順次処理されます。Mule では、自動調整機能によって、使用するスレッド数と適用する並列性レベルが決定されます (​「実行エンジン」​を参照)。

このフェーズ中、コンポーネント内のプロセッサーは ​payload​ および ​vars​ Mule 変数を使用してレコードにアクセスし、変更を行います。Batch Job ではすべてのレコードの処理が完了した後でレコードがコンシュームされます。そのため、​処理済み​レコードを外部サーバーまたはサービスに転送する場合は、Batch Step または Batch Aggregator コンポーネント​​で転送する必要があります。Mule 変数の伝播ルールについては、​「変数の伝播」​を参照してください。

Batch Step ではブロック内のレコードを処理した後に、レコードをステッピングキューに送信します。ステッピングキューでは、レコードは次の Batch Step を待機します。すべてのレコードが同じ Batch Job コンポーネント内のすべての Batch Step を通過するまで、このプロセスが続行されます。このフェーズの最後の時点で、すべてのレコードがコンシュームされます。Mule フローのダウンストリームプロセッサーによる追加の処理には使用できません。

Batch Aggregator コンポーネント内で行われるレコードに対する変更は Batch Aggregator コンポーネント外に​伝播されない​ため、変更内容はフローの後続の Batch Step コンポーネントでは表示されませんのでご注意ください。

Batch Step のレコードのステッピングキュー

処理が行われるときに、各レコードはすべての Batch Step コンポーネントでの処理を監視します。

デフォルトでは、Batch Job インスタンスは、キューに追加されたすべてのレコードが 1 つの Batch Step コンポーネントでの処理を終了するのを待たずに、レコードを次の Batch Step で処理できるようにします。Batch Aggregator コンポーネントを設定するとこの動作が変更されます。

  • Batch Aggregator コンポーネントが固定サイズを設定するときの動作:

    Batch Aggregator 内のプロセッサーは入力としてレコードの配列を受け取れる必要があります。

    固定サイズのアグリゲーターを使用する Batch Job プロセス

    1 Batch Job コンポーネント内の各 Batch Step によって 1 つ以上のレコードブロックが受け取られ、並列での処理が開始されます。
    2 Batch Step コンポーネントはレコードを処理した後で、さらに処理するためにレコードを Batch Aggregator コンポーネントに送信します。
    3 固定サイズ (​size​) を処理するよう設定した場合、Aggregator コンポーネントによってレコードが指定した数のレコードが含まれる 1 つ以上のブロックに配置されます。レコードが設定したサイズより少ない場合、最後のレコードのブロックが小さくなります。
    4 特定の配列でレコードを処理した後で、Batch Aggregator コンポーネントではすべてのレコードブロックがステッピングキューに送信されます。
  • Batch Aggregator コンポーネントがレコードをストリーミングするよう設定されているときの動作:

    ストリーミング時には、Batch Aggregator コンポーネントではレコードをレコードブロックに配置するのではなく、受け取った直後にレコードを処理します。アグリゲーターのすべてのレコードで​現在​の Batch Step のすべてのレコードが処理されるまで、レコードは​​の Batch Step コンポーネントに公開されません。

    コンポーネント内のプロセッサーは入力としてレコードの配列を受け入れることができる必要があります。

    ストリーミング用にアグリゲーターが設定されている場合の Batch Job プロセス

    1 各 Batch Step コンポーネントで 1 つ以上のレコードブロックを受け取り、レコードブロックの並列処理を開始します。
    2 Batch Step でレコードを処理したら、レコードを Batch Aggregator に送信してさらに処理を行います。
    3 Batch Aggregator コンポーネントでは、現在の Batch Step による処理を待機している、ステッピングキュー内のレコードがなくなるまでレコードの処理を継続します。
    4 Batch Aggregator コンポーネントでは集約したすべてのレコードがステッピングキューに送信されます。

Mule では、各 Batch Step での処理に成功または失敗したすべてのレコードのリストを保持しています。Batch Step のイベントプロセッサーでレコードの処理に失敗した場合、Mule はバッチの処理を続行し、後続の各 Batch Step では ​acceptPolicy​ に基づいて失敗したレコードをスキップします。Batch Job コンポーネントには、Batch Job が停止する前に失敗できるレコードの数を設定するための ​maxFailedRecords​ プロパティが用意されています。​「Batch Job のプロパティ」​を参照してください。

On Complete フェーズ

このフェーズ中、特定の Batch Job インスタンスで処理したレコードのレポートまたは概要を作成するように Mule Runtime を設定できます。このフェーズでは、システム管理者および開発者に、どのレコードが処理に失敗し、どのレコードが正常に処理されたかに関するインサイトが提供されますが、各レコードの処理が行われたり各レコードへのアクセスが提供されたりすることはなく、処理されたレコードがフローのダウンストリームプロセッサーに渡されたりすることもありません。

このフェーズの終了時に Batch Job インスタンスは完了し、消滅します。

ベストプラクティスとしては、失敗または成功したレコードについて報告するための何らかのメカニズムを設定し、必要な場合は追加アクションの実行を促してください。On Complete フェーズ中に、次のいずれかのタスクを実行できます。

  • Mule アプリケーションの他の場所にある Batch Job の結果オブジェクトを参照し、特定の Batch Job インスタンスで処理に失敗したレコード数などの Batch Job メタデータを取得および使用する。

  • 各 Batch Job インスタンスの結果オブジェクトを記録する。

<batch:job name="Batch3">
  <batch:process-records>
    <batch:step name="Step1">
      <batch:record-variable-transformer/>
      <ee:transform/>
    </batch:step>
    <batch:step name="Step2">
      <logger/>
      <http:request/>
    </batch:step>
  </batch:process-records>
  <batch:on-complete>
    <logger level="INFO" doc:name="Logger"
            message='#[payload as Object]'/>
  </batch:on-complete>
</batch:job>

ロガーから ​payload as Object​ に設定すると、レポートは次のようになります。

INFO  2022-07-06 11:39:02,921 [[MuleRuntime].uber.06:
[w-batch-take6].batch-management-work-manager @56978b97]
[processor: w-batch-take6Flow/processors/3/route/1/processors/0;
 event: e835b2c0-fd5a-11ec-84a5-147ddaaf4f97]
org.mule.runtime.core.internal.processor.LoggerMessageProcessor:
{onCompletePhaseException=null, loadingPhaseException=null, totalRecords=1000,
 elapsedTimeInMillis=117, failedOnCompletePhase=false, failedRecords=0,
 loadedRecords=1000, failedOnInputPhase=false, successfulRecords=1000,
 inputPhaseException=null, processedRecords=10, failedOnLoadingPhase=false,
 batchJobInstanceId=e84b5da0-fd5a-11ec-84a5-147ddaaf4f97}

インスタンス内で失敗したレコードの数を返す ​payload.failedRecords​ のように、Batch Job レポートオブジェクトの項目は DataWeave セレクターを使用するときのキーとしてアクセスできます。

On Complete フェーズを空のままにすると、Batch Job インスタンスは警告なしに完了し、たとえば次のように、インスタンスに関する処理情報がログで提供されます。

Finished execution for instance 'e84b5da0-fd5a-11ec-84a5-147ddaaf4f97'
of job 'w-batch-take6Batch_Job'.
Total Records processed: 1000. Successful records: 1000. Failed Records: 0