DataWeave スクリプト

DataWeave 2.1 は Mule 4.1 と互換性があります。 Mule 4.1 の標準サポートは 2020 年 11 月 2 日に終了しました。このバージョンの Mule は、拡張サポートが終了する 2022 年 11 月 2 日にその​​すべてのサポートが終了します。

このバージョンの Mule を使用する CloudHub には新しいアプリケーションをデプロイできなくなります。許可されるのはアプリケーションへのインプレース更新のみになります。

標準サポートが適用されている最新バージョンの Mule 4 にアップグレード​することをお勧めします。これにより、最新の修正とセキュリティ機能強化を備えたアプリケーションが実行されます。

DataWeave は Mule フローの主データ変換言語です。Transform Message コンポーネントでスタンドアロンの DataWeave スクリプトを記述できます。また、インライン DataWeave 式を記述すると、データを​その場​で変換し、さまざまなプロパティの値 (イベントプロセッサまたはグローバル設定要素の設定項目など) を動的に設定することもできます。インライン DataWeave 式は ​#[ ]​ コードブロックで囲みます。たとえば、DataWeave 式を使用して、Choice ルータの条件を設定したり、Set Payload または Set Variable コンポーネントの値を設定したりできます。

次の例の DataWeave コードでは、DataWeave の ​now()​ 関数を使用して、タイムスタンプ変数を現在時刻に設定しています。

例: 簡単なインライン DataWeave スクリプト
<set-variable value="#[now()]" variableName="timestamp" doc:name="Set timestamp" />

DataWeave コードを​外部ファイル​に保存して他の DataWeave スクリプトに読み込んだり、Mule アプリケーションのすべてのコンポーネントで共有できる再利用可能な DataWeave 関数のモジュール (ライブラリ) に DataWeave コードをファクタリングしたりすることもできます。

DataWeave スクリプトの構造

DataWeave スクリプトとファイルは 2 つの主なセクションに分割されます。

  • ヘッダー: 本文の式に適用するディレクティブを定義します (省略可能)。

  • 本文: 出力構造を生成する式が含まれます。

ヘッダーを含めた場合、ヘッダーは本文の上に表示され、3 つのダッシュ ​---​ で構成される区切り文字で分離されます。

DataWeave ファイルの例を次に示します。このファイルでは、ヘッダーで出力ディレクティブを宣言し、その後の DataWeave 式で、子の 2 つのキー/値ペアを含むユーザオブジェクトを作成します。

例: 簡単な DataWeave スクリプト
%dw 2.0
output application/xml
---
{
  user: {
    firstName: payload.user_firstname,
    lastName: payload.user_lastName
  }
}

DataWeave ヘッダー

この例は、ヘッダーディレクティブで使用できるキーワード (​import​、​var​ など) を示しています。

DataWeave スクリプト
%dw 2.0
import * from dw::core::Arrays
var myVar=13.15
fun toUser(obj) = {
  firstName: obj.field1,
  lastName: obj.field2
}
type Currency = String { format: “##“}
ns ns0 http://www.abc.com
output application/xml
---
/*
 * Body here.
 * /
  • %dw​: DataWeave バージョンは省略可能です。デフォルトは、​2.0​ です。

    例: %dw 2.0

  • output​: スクリプトから出力される MIME タイプを特定する、よく使用されるディレクティブ。

    例: output application/xml

    デフォルト: 出力が指定されていない場合、デフォルトの出力は、スクリプトで使用されている入力 (ペイロード、変数など) を検査するアルゴリズムによって決まります。

    1. 入力がない場合、デフォルトの ​output application/java​ になります。

    2. すべての入力の MIME タイプが同じ場合、スクリプトの出力は同じ MIME タイプになります。たとえば、すべての入力が ​application/json​ の場合、​output application/json​ が出力されます。

    3. 各入力の MIME タイプが異なり、出力が指定されていない場合、スクリプトは例外をスローして、出力の MIME タイプを指定するようにユーザに知らせます。

      指定できる出力のタイプは 1 つのみです。

  • import​: DataWeave 関数モジュールをインポートします。​「DataWeave 関数」​を参照してください。

  • var​: DataWeave スクリプトの本文全体で参照できる定数を定義するためのグローバル変数。

    %dw 2.0
    var conversionRate=13.15
    output application/json
    ---
    {
     price_dollars: payload.price,
     price_localCurrency: payload.price * conversionRate
    }

    詳細は、​「DataWeave 変数」​を参照してください。

  • type​: 式で使用できるカスタム型を指定します。

    完全な例は、​「DataWeave を使用した型の強制」​を参照してください。

  • ns​: 名前空間。名前空間をインポートするために使用します。

    %dw 2.0
    output application/xml
    
    ns ns0 http://www.abc.com
    ns ns1 http://www.123.com
    ---
    {
        ns0#myroot: {
             ns1#secondroot: "hello world"
        }
    }
  • fun​: スクリプトの本文内からコールできるカスタム関数を作成します。

    %dw 2.0
    output application/json
    fun toUser(user) = {firstName: user.name, lastName: user.lastName}
    ---
    {
      user: toUser(payload)
    }

インライン DataWeave スクリプトにヘッダーを含める

インライン DataWeave スクリプトを記述する場合、DataWeave スクリプトのすべての行を 1 つの行にフラット化することで、ヘッダーディレクティブを含めることができます。小さな DataWeave スクリプトの場合、これにより、ヘッダーディレクティブをすばやく適用し (個別の Transform Message コンポーネントを追加して変数を設定する必要はありません)、次のイベントプロセッサで変数を置き換えることができます。

たとえば、前述の Transform Message コンポーネントと同じ有効な XML 出力を作成する Mule 設定の XML を次に示します。

例: 簡単なインライン DataWeave スクリプト
<set-payload value="#[output application/xml --- { myroot: payload } ]" doc:name="Set Payload" />

DataWeave ドキュメントに多くの​変換例​が記載されています。

DataWeave 本文

DataWeave 本文には、出力構造を生成する式が含まれます。MuleSoft では、DataWeave モデルを使用してデータを操作するための正規の方法 (クエリ、変換、ビルドプロセス) が提供されています。

DataWeave スクリプト用の JSON 入力を提供する簡単な例を次に示します。

例: JSON 入力
{
    "message": "Hello world!"
}

この DataWeave スクリプトは、上の JSON 入力のペイロード全体を取得して ​application/xml​ 形式に変換します。

例: application/xml を出力するスクリプト
%dw 2.0
output application/xml
---
payload

次の例は、DataWeave スクリプトから生成された XML 出力を示しています。

例: XML 出力
<?xml version='1.0' encoding='UTF-8'?>
<message>Hello world!</message>

上のスクリプトは JSON 入力を XML 出力に正常に変換します。

エラー (スクリプティングエラーと書式設定エラー)

DataWeave スクリプトは、DataWeave コーディングエラーを原因とするエラーと書式設定エラーを原因とするエラーをスローする可能性があります。このため、データ形式を変換する場合、言語と形式の両方の制約に留意することが重要です。たとえば、XML には単一ルートノードが必要です。​上の DataWeave スクリプト​を使用して次の JSON 入力を XML に変換しようとすると、JSON 入力に単一ルートがないためエラー (​Unexpected internal error​) が発生します。

例: JSON 入力
{
    "size" : 1,
    "person": {
      "name": "Yoda"
    }
}

スクリプトを作成するには、入力を JSON に似た ​application/dw​ 形式に標準化することをお勧めします。実際に、エラーが発生した場合は、単に入力を ​application/dw​ に変換することができます。変換が成功した場合、エラーは書式設定エラーの可能性があります。変換が失敗した場合、エラーはコーディングエラーの可能性があります。

次の例では、出力形式を ​application/dw​ に変更します。

例: application/dw を出力する DataWeave スクリプト
%dw 2.0
output application/dw
---
payload

このスクリプトでは上記の ​JSON 入力例​から ​application/dw​ 出力が正常に生成されることを確認できます。

例: application/dw 出力
{
  size: 1,
  person: {
    name: "Yoda"
  }
}

つまり、前述のエラー (​Unexpected internal error​) は、コーディングではなく形式に固有のエラーであることがわかります。上記の ​application/dw​ 出力では、XML 形式で必要な単一ルート要素が提供されていないことを確認できます。​XML​ 出力用のスクリプトを修正するには、例えば次のように単一ルート要素をスクリプトに提供する必要があります。

例: application/xml を出力するスクリプト
%dw 2.0
output application/xml
---
{
    "myroot" : payload
}

出力が XML の要件を満たすようになったため、出力ディレクティブを ​application/xml​ に戻すと、結果として有効な XML 出力が生成されます。

例: 単一 XML ルートを含む XML 出力
<?xml version='1.0' encoding='UTF-8'?>
<myroot>
  <size>1</size>
  <person>
    <name>Yoda</name>
  </person>
</myroot>

特殊文字のエスケープ

DataWeave では、バックスラッシュ (​\​) を使用して、入力文字列で使用している特殊文字をエスケープします。

文字列内の特殊文字は多くありません。

  • $​: 文字列で ​$​ が使用されている場合、エスケープする必要があります。エスケープしないと、DataWeave は ​$​ を名前のない関数パラメータとして処理し、エラー ​Unable to resolve reference of $.​ を返します。

  • "​: 二重引用符で囲まれた文字列の場合、文字列に含まれる二重引用符をエスケープする必要があります (例: "a\"bcdef"​)。この例の 2 番目の二重引用符は、​a​ で始まり ​f​ で終わる文字列の一部です。

  • '​: 一重引用符で囲まれた文字列の場合、文字列に含まれる一重引用符をエスケープする必要があります (例: 'abcd\'e"f'​)。この例の 2 番目の一重引用符は、​a​ で始まり ​f​ で終わる文字列の一部です。この場合、二重引用符をエスケープする必要はありません。

  • `​: (DataWeave バージョン 2 でサポートされる) バッククォートで囲まれた文字列の場合、文字列に含まれるバッククォートをエスケープする必要があります (例: `abc\​def``)。

  • \​: バックスラッシュは他の特殊文字をエスケープするために使用する文字列であるため、これを文字列で使用するには別のバックスラッシュでエスケープする必要があります (例: \\​)。

  • \n​: 改行を挿入します。

  • \t​: タブを挿入します。

  • \u​: Unicode 文字を挿入します (例: \u25c4​)。

有効な識別子を宣言するためのルール

有効な識別子を宣言するには、その名前が次の要件を満たす必要があります。

  • 大文字または小文字にかかわらずアルファベット文字 (a-z) で始まる必要があります。

  • 名前の 2 文字目以降には、文字、数字、およびアンダースコア (​_​) の任意の組み合わせを含めることができます。

  • 名前は DataWeave の予約済みのキーワード (完全なリストは、​予約済みのキーワード​ を参照) に一致することはできません。

有効な識別子のいくつかの例を以下に示します。

  • myType

  • abc123

  • a1_3BC_22

  • Z___4

  • F

次の表で、無効な識別子の例と、無効になる理由を説明します。

Identifier (識別子) 問題

123456

数字で始まることはできません。

value$

特殊文字を含めることはできません。

_number

アンダースコアで始まることはできません。

type

予約済みのキーワードは使用できません。

予約済みのキーワード

有効な識別子は、予約済みの DataWeave キーワードに一致することはできません。

  • and

  • as

  • async

  • case

  • default

  • do

  • else

  • enum

  • false

  • for

  • fun

  • if

  • import

  • input

  • is

  • ns

  • null

  • or

  • output

  • private

  • throw

  • true

  • type

  • unless

  • using

  • var

  • yield

DataWeave スクリプトの​入力​文字列では特殊文字がエスケープされますが、​出力​では、出力形式の要件に従ってエスケープされます。この要件は、​application/json​、​application/xml​、​application/csv​ などの形式によって異なる可能性があります。

この例では、二重引用符で囲まれた内部の二重引用符がエスケープされます。

DataWeave の例
%dw 2.0
output application/json
---
{
    "a": "something",
    "b": "dollar sign (\$)",
    "c": 'single quote (\')',
    "c": "double quote (\")",
    "e": `backtick (\`)`
}

JSON 出力でも、出力が有効な JSON になるように二重引用符がエスケープされますが、他の文字はエスケープされません。

JSON 出力
{
  "a": "something",
  "b": "dollar sign ($)",
  "c": "single quote (')",
  "c": "double quote (\")",
  "e": "backtick (`)"
}

次の例では、同じ文字がエスケープされますが、XML に出力されます。

DataWeave の例
%dw 2.0
output application/xml
---
{
  xmlExample:
  {
     "a": "something",
     "b": "dollar sign (\$)",
     "c": 'single quote (\')',
     "d": "double quote (\")",
     "e": `backtick (\`)`
   }
}

XML 出力は、(JSON 出力とは異なり) 二重引用符をエスケープしなくても有効です。

XML 出力
<?xml version='1.0' encoding='UTF-8'?>
<xmlExample>
  <a>something</a>
  <b>dollar sign ($)</b>
  <c>single quote (')</c>
  <d>double quote (")</d>
  <e>backtick (`)</e>
</xmlExample>

DataWeave コメント

Java に似た構文を使用するコメントも DataWeave で受け入れられます。

// My single-line comment here.

/*
 * My multi-line comment here.
 */

dwl ファイル

Transform や他のコンポーネント内で DataWeave スクリプトを指定するのに加えて、​.dwl​ ファイル内でスクリプトを指定することもできます。Studio プロジェクトでは、スクリプトファイルは ​src/main/resources​ に保存されます。

Mule アプリケーションの XML では、​${file::filename}​ 構文を使用して、​dwl​ ファイル内のスクリプトを、式を期待している XML タグに送信することができます。たとえば、次の Choice ルータの ​when expression="${file::someFile.dwl}"​ を参照してください。

<http:listener doc:name="Listener" config-ref="HTTP_Listener_config" path="/test">
  <http:response >
    <http:body ><![CDATA[#[${file::transform.dwl}]]]></http:body>
  </http:response>
</http:listener>
<choice doc:name="Choice"  >
  <when expression="${file::someFile.dwl}" >
    <set-payload value="It's greater than 4!" doc:name="Set Payload"  />
  </when>
  <otherwise >
    <set-payload value="It's less than 4!" doc:name="Set Payload" />
  </otherwise>
</choice>